子どもを本好きにするために、本は丁寧に扱わねばならぬの呪縛をとく

子どもの本と玩具の専門店で働いていた頃のこと。

おばあちゃんと5歳の男の子が来店した。

男の子は、買う本をなかなか決められない。

見かねたおばあちゃんに、
本を選ぶ手伝いを頼まれた。

本を手に取っては置く、を繰り返す男の子にどんな本が好きかを訊ねたら

「ひょうしのない本」と答えた。

???

よくよく聞いてみたら、自宅では紙の表紙をつけたまま絵本を読んでいるらしい。
端っこが破れたり、折れる度にママに怒られるから大変なのだそうだ。

私は何冊かの候補を並べた。

男の子は
紙の表紙にくるまれていない
板紙でできた乗り物の本を選んだ。

ていねいに

本を丁寧に扱うことを強く求めすぎると、
子どもは本から遠ざかる。

物を大切に扱うことを教えるのは大事。

でも、小さな子の頭の中が、本を丁寧に扱わないと怒られちゃうという意識でいっぱいになると、本を手に取ることのハードルが上がってしまうのだ。

もし、表紙が破れることが気になるなら、初めに外しておくといい。
少し大きくなってから、表紙を戻してもいい。

もし、ページが破れたら、子どもと一緒に修復したらいい。

子どもにとっての「本を大切にする」は
綺麗に本棚に並べておくことだけでなく、
時に布団の中で一緒に寝たり、
出先に持ち歩いてボロボロにしたり、
様々な形がある。

子どもを本好きにするには?と真剣に
考えているお母さんは、
本を丁寧に扱う事をしっかり教えてあげている
キチンとした人が多いような気がする。

それもとても素敵なことだ。

だから、
本を大切にすることを教えながら…

ちょっとだけ汚れに目をつぶる。
ちょっとだけ丈夫な本を買う。
ちょっとだけ表紙を外しておく。

たいせつに

「本当に大切にする」ということは、
ただ丁寧に扱うことではない。

本当はどうすることなのか?

物を大切にすることを教えるつもりが、
逆に子どもに教えられることも
あるから面白い。

店に来た男の子に
「表紙をはがしてから読んでいい?とママに頼んでみたらどうかな」

と耳うちしたけど、その後どうだったかな。

子どもを本好きにするには
本の扱い方の適当さに
ちょっぴり目をつぶる。

真面目なおうちほど
意外と効果があるから
お試しあーれ。