子どもに通じる言葉は、あちらの世界に

娘(小3)はポケモンにはまっている。

息子(小6)はスターウォーズにはまっている。

娘は常に幻のポケモンをゲットする方法や

手持ちのポケモンを進化させる方法の

情報収集に余念がない。

息子は、隙あらば

艦隊やらライトセーバーを作っている。

同じ家に暮らしていても

娘はポケモンと共にカロス地方を旅しているし

息子は、遠い昔の遥か彼方の銀河系で日々戦っている。

そんな家庭内別居。

生活に支障をきたし

「おぃおぃ、君、

株式会社ポケモンさんが

プロデュースしてる世界から帰ってこーーーい」

とか

「君、君、それはルーカスおじさんの作った世界だからね」

というチャチャを入れる母だが

当然子らの耳には入らない。

同じ

自分も昔は

トールキンの『指輪物語』を読んで

「中つ国」に迷い込んだり

ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』

のファンタージエンに吸い込まれ

食事に呼ばれても動かず

上の空だった。

当時、自分をほおっておいてくれた母を

思うと、自分も子らをつい黙認してしまう。

同じ国の言葉

どうしてもやらねばならぬ事

(本当はそんなもの睡眠食事排泄以外ないのだが)

をやらせる時は

「娘ちゃん、

早く宿題終わらせて進化しちゃおうぜ!」

とか

「息子よ、計算力を高めて、

フォースを覚醒させるのだ!」

とか

あちらの国の文脈で話すと

耳に入って、時に

「よぉ〜し、やるか〜」

とスイッチも入る。

顔芸の過ぎた母に向かって

「顔がヤバイ、うざいんだよ!」と

言おうものなら

ダース・ベイダーがルークに向かって

言ったように低い声で

「I’m your mother 」

と返せば

「Noーーーーーーーーーーーー!」

と叫んで

母の勝ちである。

子どもに通じる言葉は

たいてい

あちらの世界にある。