親のエゴで保育園児を胃炎にした話


お腹いたーい、お腹いたーい

と娘(6)が度々訴えるようになって3,4ヶ月。

保育園には楽しそうに通い、
腹痛を訴えるのも楽しく遊んでる時なので、
何かをさぼる口実や嘘ではなさそうだ。
すぐに治るし、他はどこも悪くない。

実は、私は、
同じクラスの女の子が突然娘を
突き飛ばすのを何回か見ていた。

喧嘩や遊びの延長ではなく、
前触れもなく
いきなり突き飛ばす。

でも娘は、一言も発せずにジッと固まったまま。

もうすぐ小学生なのだから、
「やめて」と言い返したり、
せめて先生に言ったりするようになって欲しいな、と思ったので、本人にはそう話した。

担任の保育士の先生たちが良い先生だったから、
安心し過ぎたのもあった。

でも、すぐにカッとしないで、
娘だけじゃなく、相手の子の育ちも見守ることが出来るワタシでいたいというエゴがあったんだと思う。保育士の卵を教えてきた自負とか。

甘い見通し

お腹痛いとはいうけど、
保育園に行きたくないとも言わないし、
突き飛ばすのを見たのも忘れかけた頃
何の会話も関わりもない中で、
娘がその子に突然突き飛ばされるのを見た。

相変わらず、娘は黙ってジッと固まったままだった。

目の前のことだったので、
その子に「それはやっていいこと?」
とたずねると、そのまま、さーっと走って帰っていった。
翌日、担任に今迄のことや昨日のことを話すと
全く気付いていなかったとのことだった。

そうか、そうだよね、当然のことだ。
18人のクラスに2人の担任、
発達の関係で補助の必要な子も2人いる
いくら優秀な保育士でもかなりの負担だ。
目が届くと思い込んだ時点で素人だ。
自分が甘かったな…。

突き飛ばしていた子は、
とても賢い子だったので、
先生に呼び出されたら、すぐに認めて、
翌日から仲良くしてくれるようになった。

同じように突き飛ばされていたのは、
娘を含めて3人いた。

あさはかな

それから数ヶ月後、その子は、
再び娘を突き飛ばすようになったけれど、
今度は滑り台の裏など人目のつかないところで、
突き飛ばした後、口止めするようになった。

家庭の中に色々ある、という事情も聞いたけど…
だからといって、何か出来ることもなかった。

先生たちも真剣に考えてくれたけれど、
卒園間近で毎日とにかく忙しい。
その子とは別々の学校へ行くことになったので
怪我だけしなければ後は何も望まない、
とだけ伝えた。

娘は、
抱えていたことを母と先生に話し、
胃炎の薬を処方されたら、
すぐに腹痛を訴えなくなった。

担任の先生には

親は自分の子どものことだけ
受け止めればいいんですよ。
親だけは、自分を信じて受け止めてくれると
子どもに感じさせるのが大事なんですよ。

と言われた。

どちらも自分が保育士養成校で、
学生相手に口にしていたようなことだ。
嗚呼、ほーんと、自分の子も守れずに
他人の子とも共に育ちあいたいという理想とか、
おこがましいし、おろかだな…。

無力

小学校でも
家庭の中に難しい問題を抱えている子が
少なくない。
その過酷さが直接的に間接的に
聞こえてきても何も出来ない。

辛さを誤った形で発散せざるを得ない子達から、まずは自分の子を守らなくてはならない場面もある。果たして守れているのか、すらわからない。

無力だな…。
色々無念な中で力をつけたいと思う。

もしまた教壇に戻ることがあれば

「プロフェッショナルとしての教師や保育士の存在意義の一つは、親の盲目的で主観的な愛情を許容して支えることかもね」

と話すのかもしれない。

いや、もう全然、わかんないけどね…。